今回はビットコインのなどの仮想通貨市場の下落の要因について解説している「現代マネー(講談社)」から「狂乱のビットコイン、いよいよ「バブル崩壊」が始まった…!(帝京大学経済学部教授:宿輪純一氏」について個人的に解説をしていきたいと思います。
主な内容として、ビットコインの下落が金融政策そしてテスラが引き金ではないかという内容で解説をされています。
ビットコインは2021年4月中旬に歴代最高価格である700万円を記録し、そこから価格が落ちてきています。
ビットコインが短期の下落トレンドに転じてから、イーサリアムのアルトコインは5月に入ってからも大きな高騰を続けていましたが、相場全体の下落の起点になったのが、大手自動車メーカーテスラ社のビットコイン決済停止のタイミングとなっています。(だからそれだけが原因で相場全体が下落したというのではないと思う。)
*この記事は著者宿輪さんを批判しているわけではなく、私個人の考えを述べたものです。(宿輪さんの意見ももっともだと思います)
記事の著者のプロフィール↓
1963年東京都 生まれ。麻布高校・慶應義塾大学経済学部卒業。富士銀行入行後、三和銀行に転職、2006年に合併により三菱東京UFJ銀行、企画部経済調査室などに勤務。15年より現職。03年より東京大学大学院、早稲田大学などで非常勤講師を兼務。現在、財務省・金融庁・経済産業省や全国銀行協会などの経済・金融関係委員会に参加。06年より公開講義『宿輪ゼミ』主催。映画評論家。文化放送「The News Masters TOKYO」レギュラー・コメンテーター。著書に『通貨経済学入門(第2版)』、『アジア金融システムの経済学』(ともに日本経済新聞出版社)、『決済インフラ入門』、『ローマの休日とユーロの謎』(ともに東洋経済新報社)など多数。
この記事の目次
【解説】狂乱のビットコイン、いよいよ「バブル崩壊」が始まった…!
仮想通貨市場の下落
近ごろ、ビットコインを始めとした仮想通貨(暗号資産)の乱高下が止まらない。価格の動きは最近、ビットコインでは1万ドル近辺で推移していたが、この4月には6倍となる最高値の約6万5000ドルを付けた。そして、その後、一時、半値以下に暴落した。
金融市場の取引では1年程度で6倍に価格が上がる現象とはバブルといわざるを得ない。
こちらはビットコインの日足チャートです。
4月中旬に最高価格をつけたビットコインはそこから下落し、6月8日時点で360万円を記録しています。
本日8日に前トランプ大統領が「ビットコインは詐欺だ」と発言したことから400万円から更に下落しています。
直近の高値700万円からすると約50%の下落となっています。
確かにここまで下落すればバブル崩壊と言ってもいいのではないかと思います。
ただ一年前は100万円程度だったため、実際にビットコインのパフォーマンスはまだ高いです。
暗号資産(仮想通貨)は、日本円やドルなどのように国がその価値を保証している 「法定通貨」ではありません。 インターネット上でやり取りされる電子データです。」としている。
ビットコインは法定通貨ではなく、もちろん国がその価値を保証しているわけではありません。
ビットコインの価値の源泉はブロックチェーンというシステムであり、政府の管理ができないからこそ価値が出ていると言えます。
2020年コロナウイルスの影響を受け、多くの法定通貨(ドルや円など)が発行されました。もともとなかったお金をたくさん印刷するということは将来的にインフレ、つまり価値が下がることを意味します。
それとは逆にビットコインは発行枚数が21万枚と決まっており、多くの人が保有すればするほど残りが少なくなり価値が高まる設計となっています。
つまりインフレ耐性が強く、ビットコインが一時50万円まで下がりそこから1年で700万円まで上がったのは、法定通貨の価値が下がりビットコインの価値が上がったという見方もできるです。
政府の信用がないから価値がないという印象を受ける文面ですが、政府にコントロールされないからこそ価値がでているのです。(政府の信用=法定通貨の価値)
バブルの終焉について
昨年の10月からは機関投資家が積極的な購入を開始し、仮想通貨の価格の上昇に貢献した。金融市場でいうと、世界的な量的金融緩和が続き、一般的な金融市場では運用難となっていたため、最近では、価格が上がるものならなんでも買うという感すらあった。その中で、仮想通貨も対象となったのである。
2020年の法定通貨の大量発行から、金や株、仮想通貨などの資産が買われることになり、価格が上がりました。
また仮想通貨の銘柄では私が見てもなぜこの銘柄まで上がっているのか?といった感じでたくさんの銘柄の価格があがっています。
しかし、仮想通貨だけではなく、株式市場も同様で通常バブルや上昇相場とはそういうものです。
ビットコインへの環境負荷
テスラ社はまず、2月にビットコインの購入を開始した。さらに3月にはテスラの自動車(電気自動車)の決済(購入)もビットコインで開始した。そしてビットコインは4月に市場最高値を付けた。その後、テスラは、ビットコインを徐々に売却し、5月には自動車のビットコイン決済も停止した。
2021年テスラはビットコイン支払いを発表したものの、5月には環境負荷を理由にビットコイン決済を停止しました。
環境に関しては悪影響が大きいのである。つまり、ビットコイン等の取引をすること自体が環境配慮ではないとなっている
個人的に仮想通貨相場全体が下落となったのが、テスラのビットコイン決済発表ではないかと感じています。
しかしながらそれが直接的ではあっても要因としては、これだけというのではないと思っています。
上がりすぎた相場はどこかで調整が入るのはこれまでのサイクルでわかることですし、それは仮想通貨だけでなく株式市場も同様です。
量的緩和で金余りの状態であり、そこから資産価値(価値)を押上げ、利確の動きになっていると思っています。
基本的に上がり続ける相場というものはなく相場がこのように調整するのはこれまでの相場の動きと一緒で特に当たり前という状況だと思います。
またテスラのビットコイン売却について
米電気自動車大手のテスラは、同社が保有するビットコインの一部を売却し、2億7200万ドル(約294億円)の利益を計上した。
テスラの最高財務責任者(CFO)を務めるザック・カークホーン氏は26日、同社が保有するビットコインの約1割を1月~3月期に売却したことを明らかにした。
このように一部ビットコインを売却しています。その額300億円
しかしながらテスラが2021年の当初ビットコインを購入した額は1500億円。そこからビットコインの価格は更に上がっており、300億円以上の利益は出ていて、初期投資額の1500億円の売却は行ってないと考えられえます。
またその後イーロン・マスクはそれからビットコインの売却は行ってないと発言しています。
またこのツイートはビットコインをガチホ(しっかりとホールド)している絵文字が使われています。
ビットコインの消費電力は透明性が高い
ビットコインの取引において、ネットワークを支えているのがマイニング。
マイニングについてASICという機械を用いて行われており、電力計算の競争によって勝ち得たところがマイニングを行ってビットコインで報酬をもらうという設計になっています。
ビットコインの電力については透明性が高く、リアルタイムの電力が世界的に有名なケンブリッジ大学が「cambrige bitcoin electricity consumption index」でも公開されています。
またビットコインの年間電力消費量、推定約113.89TWh /年と調査結果がでています。
しかしながら、ビットコインと関係性の高い、銀行や金産業については正式な電力消費電力が公開されていないため、「ビットコインが環境に悪いということだが一体何と比較して悪いのか?」という議論はあまり問題になぜか上がらないのです。
こちらはギャラクシーデジタルの銀行・金産業における電力消費量の調査結果をまとめたものです。
これらの結果ではビットコインの消費電力は、銀行・金産業と比較して半分という結果になっています。
金産業については、大型の機械を用いて地中を掘削し金を採掘しています。機械で生産をするプロセス。そこから製造するプロセス。そして商品開発のプロセスと分かれており、それぞれに電力消費量が試算されています。
また銀行については取引においてデータを処理するデータセンターを保有しており、そこで多くの電力が消費されています。
このようにビットコインの電力消費量が大きいから環境に悪いというのは、比較対象のデータが不足している部分を勘案しても早計と言えるのでないでしょうか。
またビットコインネットワークにおける送金手数料と銀行の送金手数料についてどちらが高いかはおそらく比べるまでも無いのではないでしょうか。
直近でエルサルバドルがビットコインを法定通貨とした理由の一つに、アメリカ本土に出稼ぎにいった人の本国への銀行送金がGDPの20%を占め、また送金手数料が全体の10から20%になっているというニュースがでています。
ビットコインの送金手数料が10%、20%など手数料が高騰した際の少額送金を除いて普通はありえないことです。
ビットコインネットワークを使った送金がエルサルバドルの経済にどのような影響を及ぼしていくのか非常に注目のトピックスと言えます。
イーロン・マスクはマイニングのクリーンエネルギー活用に動いている
米電気自動車(EV)メーカー、テスラのイーロン・マスク最高経営責任者(CEO)は、北米にいるビットコインのマイナーと話したとし、再生エネルギー使用に関する現況と計画の公表に加え、世界のマイナーにもそれを呼び掛けることに北米のマイナーがコミットしていると24日にツイートした。ーブルームバーグ
イーロン・マスクはこのことについて次のようにツイートしています。
北米のビットコイン マイナーと話しました。彼らは、現在および計画中の再生可能エネルギーの使用を公表し、世界中のマイナーにそうするように依頼することを約束しました。潜在的に有望といえる。
このようにイーロン・マスク自身がツイートでビットコインのマイニングについてよりクリーンなエネルギーを利用する活動を行っています。
なのでテスラがビットコイン決済を停止したから、それで終わりというわけではないのです。
またテスラ社は電気自動車だけでなく、自家発電の電池など家庭向けの商品開発もおこなっています。
Tesla(テスラ)のCEOであるElon Musk(イーロン・マスク)氏は、同社の製品だけを使ってすべての家庭を分散型発電所にし、エネルギーの生成、保存そして電力の電気会社への売り戻しさえできるようにしたい、と考えている。
マスク氏の主張は、電力会社自身が再生可能エネルギーとストレージを使って脱炭素しようと思ったら、今よりももっと多くの送電線と発電所と変電所が必要になるというものだ。それに対してテスラの製品を使う分散居住地区システムならもっと良い方法を提供できるーテッククランチ
クリーンな電力をこれまで以上により効率的にし、その余った電力をどう使っていくのかが分散型発電所になります。
この分散型発電所では余剰電力をビットコインのマイニングに使うことも可能となっており、私はイーロン・マスク自身がマイニングでクリーンなエネルギーを使う活動を行ったことについて、自社の分散型発電所から一部マイニングにシフトを行っていく可能性もあると感じています。
→(参考サイト)ソーラー発電マイニング
ビットコインの価格下落の先に
今回「狂気のビットコインはバブル崩壊したのか??」では、ビットコインがバブル的な相場となっており下落した理由が記載されています。
しかしながらその後ビットコインはどうなるのか?
価格だけでなく今後ビットコインの動向をしって将来的に価値が上がっていくのか?という視点が重要でないでしょうか。
投資では価格が上がったから買う。などど価格だけに注目して取引することは私はリスクが高いと思っていますし、中長期で見たときに資産として需要があり価値が上がるかという視点でみることが重要のです。
そしてそれは価格が下がったときに割安と判断できるかどうかにも関わってきます。
昨年から機関投資家のビットコイン購入、そしてペイパルの仮想通貨決済導入、今年にはマスターカードが仮想通貨決済を行う予定としており、直近ではエルサルバドルが初の法定通貨としてビットコインを採用予定など、仮想通貨の流れは非常に早いです。
現在のFRB(米連邦準備制度理事会)の金融政策とアメリカの赤字財政支出が、米ドルを破壊の道へと導いている。ヘッジファンドと外為界の大物スタンレー・ドラッケンミラー(Stanley Druckenmiller)氏はそう語る。ーコインデスク
2020年から大量発行されている法定通貨(ドルだけでなく各国)のインフレは今後やってくると言われています。
物の価値がある程度一定に対して紙幣の数が大きく増加するとそれは価値の下落(紙幣)を招くことになります。
その際に発行枚数が決まっていて、インフレ耐性があるビットコインやゴールドはどのような役割となっていくのか個人的に注目しています。