暗号資産(仮想通貨)ビットコインの電力消費量の高さは以前から問題視されていますが、果たしてビットコインと同じ意味合いをもつ既存の銀行システムと安全資産である金の採掘(ゴールド)ではどちらが大きいのか?
結果からするとビットコインの年間の電力消費量は既存銀行システムやゴールドの採掘に比べて少ないという結果がでています。
その結果はデジタル資産運用会社であるギャラクシーデジタル(Galaxy Digital)のレポート「On Bitcoin’s Energy Consumption(ギャラクシーデジタル)」で検証されています。
ビットコインの消費電力が高いため二酸化炭素増加で地球温暖化の問題があると言われてきていますが、なぜか既存銀行システムとの比較などが取り上げられないのも個人的に不思議に思っていました。
この記事の目次
ビットコイン、既存銀行システム、金の採掘について
今回ギャラクシーデジタルが電力消費量で3つの項目を比較したのは以下の理由があります。
●既存銀行システムはブロックチェーンを使わない送金であり、ビットコインなどブロックチェーンを使う送金と手数料や速度の面で比較されます。
●ゴールドは従来から安全資産として言われており、地球上で取れる採掘量も増減があると言われています。ビットコインについてもデジタルの安全資産と見られるようになり、ゴールドと同様に発行上限がありあらかじめの数量が決まっています。
以上のことからビットコインと既存の送金システムとして安全資産としてのゴールドは度々比較されることがあります。
ビットコインばかり電力消費量が高く批判の的となることも多いですが、なぜか既存の銀行のシステムと比較されることがほとんどみたことがありません。
しかしながらギャラクシーデジタルがその辺の考察をレポートでまとめているため、これからご紹介していきます。
ビットコインと既存銀行システム、金の採掘と電力消費量を比較
ビットコインの電力消費量は透明性がある
ビットコインの電力消費量は電力が高ければセキュリティがより強固となり、電力は必要不可欠な存在です。
そしてビットコインの場合は電力がどれくらい消費されいるのかを把握することが可能で透明性が高いと言えます。
しかしながら既存の銀行システム(貯蓄、送金、決済)やゴールドについては把握が複雑となっており不透明と言え、また正確な電力消費量が公開されていません。
そしてこれら伝統的な産業が消費電力について批判されることはほとんどありません。
開示されていない伝統的産業の消費電力が批判されず、なぜビットコインなのでしょうか? (それはビットコインの電力消費量が簡単に見積もることが可能だからでしょう)
ビットコインの電力消費のしくみ
ビットコインの直接的な電力消費量を考えてみると、取引の検証、中継ノード、世界中のマイナーの調整プール、マイニング機械が関係します。
この中でビットコインの電力消費量の約99.8%はマイニング機械(ASIC)が圧倒的な消費を占めています。
ビットコインはPOW(プルーフオブワークス)というコンセンサスアルゴリズムをもち電力消費を行い取引を処理する方法が取られています。
そしてすでに述べたように電力消費量が高いことは否定できませんが、同時にセキュリティも高いのです。
ビットコインの年間電力消費量
上の画像はビットコインネットワークの1年間の電力消費量を示した表になります。
表の一番右にビットコインの年間電力消費量、推定約113.89TWh /年がデータとして示されています。
そしてビットコインの年間電力消費量と世界の電力など主要なものと比較されたものが以下にあります。
●世界の年間エネルギー供給量は約166,071TWh /年で、ビットコインネットワークの1,458.2倍です。
●世界の年間発電量は約26,730TWh /年で、ビットコインネットワークの234.7倍です
●送電および配電で毎年失われる電力量は、約2,205 TWh /年であり、ビットコインネットワークの19.4倍です。(世界銀行とIEAの見積もりに基づく)
●アメリカの家庭における「常時接続」の電気機器の電力消費量は、約1,375 TWh /年であり、ビットコインの12.1倍です。
主要なものの電力消費量のデータと以上のように比較ができますが、なぜか既存銀行システムやゴールドなどの銀行・金産業の業界の電力消費量ははっきりした値が示されておらず不透明となっています。
ビットコインは電力消費量が高いと言われていますが、「一体何と比べて高いのか?」その辺をしっかりとした検証データで比較することは比べる先のデータが不足しており容易ではありませんが、非常に重要なことだと思われます。
リアルタイムのビットコインの電力消費量
またビットコインのリアルタイムの電力消費量については、世界的に有名なケンブリッジ大学が「cambrige bitcoin electricity consumption index」で公開しています。
金産業(ゴールド)の電力消費量
金産業の電力消費量を計算するばあい、前提として2018年の総温室効果ガス排出量(GHG)の推定値を使います。
GHGについては、ワールドゴールドカウンシルの「金と気候変動:現在および将来の影響」というタイトルのレポートを活用しています。
金産業のプロセスについては、生産プロセスと消費プロセスからなり、多くの電力消費量を占めるのが生産プロセスとなっています。
また生産プロセスは、鉱業と精製からなります。
①採掘、精製(全体の36%)→45,490,000tCO2
②採掘に関わる電力(全体の43%)→54,914,000tCO2
③商品開発、販売(全体の21%)→25,118,000tCO2
以上からトータルの年間GHG排出量の合計は、126,359,123tCO2となります。
またこの状況でビットコインの消費電力と比較するために、①、②、金の精製とリサイクルに関連する排出量のみ考慮すると100,408,508tCO2となりました。
100,408,508tCO2を電力消費量に換算すると、金産業のこれらの要素はおよそ240.61 TWh /年を利用すると推定されます。
既存銀行システム(金融機関)の電力消費量
既存銀行システムの電力消費量については、完全にビットコインと比較するのは困難と言えます。
なぜなら銀行業界は直接電力消費量を報告していないためデータが不足しているからです。
また銀行システムは、リテールバンキングシステムとコマーシャルバンキングシステムでは複数の決済レイヤーが必要となっており、その過程が複数あります。
銀行システムの主な電力消費量の要素は以下のとおりです。
①銀行のデータセンター 238.92TWh /年
②銀行の支店 19.71TWh /年
③ ATM 3.09TWh /年
④カードネットワークのデータセンター 2.00TWh /年
そしてこれらの要因から銀行システムの世界の電力消費量は263.72TWhと推定することができます。
ここで主要な電力消費量を占めるデータセンターについて、238.92TWh/年という数値は、データセンターの数を報告している唯一の銀行は、23のプライベートデータセンターを持つバンクオブアメリカを参考に算出しました。
世界の上位100行の銀行の総預金額は70兆9,721億ドルで、バンクオブアメリカの総預金額は1兆7,954.8億ドルです。
バンク・オブ・アメリカの年間電力消費量を算出(6.04TWh /年)し、この比率から世界上位100行の年間電力消費量が238.92TWh/年となります。
銀行システムの送金では、カウンターパーティと中間決済の複雑な階層となっています。
またクレジットカードネットワークは、迅速な支払いとIOUの交換に最適ですが、決済は銀行システムに依存し、銀行システムは最終決済を中央銀行に依存し、最終決済はドルシステム全体に依存します。
ビットコインと銀行の送金に関わる電力について
従来の銀行における送金についての電力消費量については、トランザクション数に関係しており、トランザクション数が増えれば増えるほどデータを拡張するため基盤施設を増やす必要があります。
またビットコインについては、トランザクション数だけでなく、ネットワークの経済性よって決まることが大きいと言えます。
結論〜ビットコインとその他の電力の比較
上の画像は今回「銀行システム」「金産業」「ビットコイン」の3つを比較したグラフになります。
地球温暖化に課題があると言われてきたビットコインは実際銀行システムや金産業に比べて約半分の年間電力消費量という結果となりました。
エネルギーは唯一の普遍的な通貨です。人間は、現状に挑戦するより多くのエネルギーを必要とする新しい技術を見つけ続けるでしょう。ビットコインはさらに別の例です。
それで、最後にもう一度元の質問に戻ると、ビットコインネットワークの電力消費は許容できるエネルギーの使用ですか?
私たちの答えは決定的です:はい。
以下の記事に他の通貨を含めて電力消費量のまとめています。