暗号資産(仮想通貨)イーサリアム(通貨単位ETH)の「ロンドンアップデート」が2021年7月に実施されますが、その際にEIP-1559という手数料削減(手数料を焼却する)のアップデートが同時の行われることになり、注目を集めています。
*イーサリアムネットワークでの手数料を「ガス代(GAS)」とも言いイーサリアムで支払れることになります。
手数料削減という書き方をしましたが、実際にはイーサリアムネットワークでのマイナーの報酬を削減するというのが直接的な言い方となります。
イーサリアムについては価格高騰とあわせて、分散型取引所DEX、DeFi(分散型金融システム)の需要の増加により多くの取引がイーサリアムのブロックチェーン上で行われ、それが送金詰まりの原因や手数料の高騰の大きな要因となっていました。
通常イーサリアムの送金では数十円だったものが、3000円近く手数料が高騰したのです。
このネットワークの負荷に対応すべく7月にEIP-1559という提案がなされました。
この記事の目次
イーサリアムの手数料が高騰した背景
イーサリアムの手数料が高騰した背景は
●イーサリアムの価格が高騰した。
●分散型金融取引所の取引量の増加
の2つが主な要因と言われています。
イーサリアム自体の価格の上昇
イーサリアムは2020年当初の2,3万円の価格から2021年4月時点で29万円を記録するなどその高騰は10倍ちかくとなりました。
価格が上がるということはそれだけイーサリアムを保有して取引をしていることになっているため、それがネットワークに負荷がかかり、手数料が増加したのが要因となっています。
分散型取引所(DEX)の需要の増加
*上のグラフは分散型取引所(DEX)の月ごとの取引量を示したもの。DEX大手のユニスワップが青色で示しており取引量が多いことがわかる。
分散型取引所(DEX)とは、コインチェックやbinanceなどの人が中心の取引所と違い、プログラムでできた取引所となっています。
このDEXの特徴としては、売買手数料が安い、直接個人のウォレットからアクセスできるためセキュリティが高い、たくさんの通貨の取引が可能、プール(仮想通貨を預ける)で金利を得る方法もある
などそのサービスは多岐に渡ります。
主なもので、ユニスワップ、スシスワップ、パンケーキスワップなどがありますが、このうち大手の分散型取引所であるユニスワップやスシスワップはイーサリアムのネットワークを使っているため、取引量が増えれば増えるほどネットワークに負荷がかかります。
よって手数料が高騰することになります。
イーサリアムの手数料削減案である「EIP-1559」について
2021年にイーサリアムのアップデートである「ロンドンアップデート」が行われることになっています。
この際に手数料削減を目的としてEIP-1559が実施される予定です。
EIP-1559は直接取引手数料を下げるわけではない。
EIP-1559はよく手数料が削減されるという言ったりする人がいますが、正確には、イーサリアムネットワークに参加しているマイナーの手数料を削減する。
という仕組みとなっています。
ですので、例えばユニスワップなどの分散型取引所で取引を行った場合の手数料自体が減ることは有りません。(2021年4月時点で3000円程度手数料が発生しています。)
イーサリアムはPOW(プルーフオブワーク)というコンセンサスが取り入れられており、マイナーの計算競争でイーサリアムの取引を支えています。
つまりマイナーがいないとイーサリアムのネットワークが成り立たなくなります。そしてマイナーは取引処理の報酬としてイーサリアム(ETH)を受け取る事になっています。
EIP-1559で手数料を削減することは、マイナー報酬が減ることになるのです。
イーサリアムのスケールを上げ、価格上昇となる要因
このEIP-1559についての効果については
●手数料を削減(焼却)することによりインフレやネットワークの混雑を防止しスケール(取引量)を拡大させる
●マイナーの報酬が減ることで利確の量が減り売り圧力が減り価格が安定する
という2つの要因があります。
マイナーの報酬を焼却(バーンという)することで、イーサリアムの発行量自体を抑制させることができるため、イーサリアムのインフレ対策、混雑の防止として働くことになります。
これがイーサリアムの取引量拡大へと働くことになります。
またマイナーはネットワーク参加の報酬としてETH(イーサリアムの通貨)を得ていますが、報酬が減ることでETHを売る売り圧力も減ることになり、イーサリアムの価格が更に安定する事になっています
イーサリアムの価格の安定はステーキングの効果もある
上のグラフはイーサリアムのステーキングの金利変動(縦軸)を予想したグラフ
イーサリアムはイーサリアム2.0の大型アップグレードの現在途中段階(2021年4月時点)となっています。
2020年12月にビーコンチェーンというアップデートが開始され、それには一定量以上のETHをステーキング(預ける)必要がありました。
ステーキングすることでビーコンチェーンが開始され、またステーキングした人は金利報酬を得ることができます。
このステーキングはイーサリアム2.0のアップグレードが終わるまで引き出すことができず、ステーキングされる量が多ければ多いほどイーサリアムが売られにくく価格が安定することにあります。
このステーキングとあわせて2021年7月に行われるEIP-1559はよりイーサリアムの価格安定に貢献し、イーサリアムの価格上昇しやすくなると言われています。